1:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 20:15:42 ID:BOVqpC62
訓練が終わり夕食を済ませ、訓練兵は宿舎で消灯までの時間を各々自由に満喫している。
僕はいつも通り、ベッドの隅で体を丸め、本を読んで過ごすことにした。
ベッドの下は少し騒がしい。
どうやら皆でトランプをするらしかった。
コニーが梯子の隙間から顔だけ出して、僕も仲間に入れと誘ってくれたが、曖昧な笑みと言葉でそれを断った。
本に目を戻そうとした瞬間、楽しそうに机を囲む皆の姿が目に入った。
この部屋はランプの頼りない灯りしかなくて薄暗い筈なのに、その光景はとても眩しく見えた。
そして、それは急にキた。
訓練が終わり夕食を済ませ、訓練兵は宿舎で消灯までの時間を各々自由に満喫している。
僕はいつも通り、ベッドの隅で体を丸め、本を読んで過ごすことにした。
ベッドの下は少し騒がしい。
どうやら皆でトランプをするらしかった。
コニーが梯子の隙間から顔だけ出して、僕も仲間に入れと誘ってくれたが、曖昧な笑みと言葉でそれを断った。
本に目を戻そうとした瞬間、楽しそうに机を囲む皆の姿が目に入った。
この部屋はランプの頼りない灯りしかなくて薄暗い筈なのに、その光景はとても眩しく見えた。
そして、それは急にキた。
2:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 20:17:02 ID:BOVqpC62
ズグン、と腹の奥から何かが生まれた。
自分の鼓動がやけにはっきりと聴こえる。
くるしい。
いたい。
いきが、
そのよく分からない感情に押し上げられ、じわじわと目に涙が溜まる。今にも零れ落ちてしまいそうだ。
見られないように顔を伏せながらそっと部屋を出た。
ライナーに声をかけられたが、震える声を抑えながら、トイレ、とだけ答えた。
ベルトルト「…うう、うわぁ、あ」
外へ出て、誰もいない宿舎裏で泣いた。涎と、涙と鼻水が混じったものが次から次へと顔を伝い、暗闇に落ちては消えていった。呼吸が浅く、切れ切れになる。
徐に、ポケットに忍ばせた折りたたみナイフを取り出す。
3:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 20:18:45 ID:BOVqpC62
震える手でナイフを広げ、その先端を手首の皮膚に押し当てる。
徐々に力を込めると、ブツ、と音を立てて冷たい金属が肉に食い込んだ。
そのままナイフを下に滑らせる。
張っていた皮膚の表面が決壊して、そこから溢れる、
血が、血が、血が。
手首に激痛が走り、思わずナイフを落としてしまった。
ベルトルト「いたい、はぁ…いたいよぉ…」
こんなことをしても、自分からは逃げられないことはわかっている。
それでも、感情の逃げ場所を無くした僕は、凝り固まった膿を出すかのように時々こうして手首を切った。
痛みに耐えかねて、どうせすぐに治してしまうのだけれど。
ベルトルト「情けない、な…」
「なにをしてるの?」
4:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 20:21:49 ID:BOVqpC62
ベルトルト「!?」
見られた。こんなところを。
ー誰に?
恐る恐る振り返ると、そこには、夜目にも美しい黒髪をたたえた、1人の少女が立っていた。
ベルトルト「ミ、カサ…?」
ミカサ「…」
ベルトルト「あ、待ってくれ!行かないで」
ミカサ「!」
ベルトルト「…ごめん、その、変なところ見せて…」
ベルトルト「あの…このことは誰にも言わないでくれ。頼む」
ミカサ「…」
ベルトルト「…ミカサ?」
5:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 20:23:04 ID:BOVqpC62
ミカサ「元より、言い触らす気はない。ただ、出血が多いので、誰かを呼ぼうと思っただけ。」
ミカサ「でも、他人に見られたくないと言うのなら、呼ばない…」
ベルトルト「そうしてくれると助かるよ」
ミカサ「…」
彼女は何か思いつたように、自分のスカートのポケットに手を入れ、刺繍の施されている白い布ーハンカチを取り出した。
そして僕の前に膝をつき、そのハンカチをそっと手首に巻いてくれた。
その全ての動作が細工物のように洗練されている、そう思った。
ベルトルト「汚れちゃうよ」
ミカサ「構わない。」
ベルトルト「ごめん…ありがとう」
鮮血は染み渡り、あっという間に白いハンカチを紅に染めた。
沈黙が怖い。何か言わなければと目を泳がせていると、ふと彼女の首元に目がいった。
6:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 20:24:27 ID:BOVqpC62
ベルトルト「は、はは、マフラーとお揃いになったね」
ミカサ「は?」
ベルトルト「…その、えっと…これ、色が」
ミカサ「笑えない」
ベルトルト「ごめん」
ミカサ「早く医務室に行くといい」
ベルトルト「大丈夫だよ。見た目より傷口は浅いから、多分」
ミカサ「…」
ミカサ「なぜ自分で切ったの?」
ベルトルト「…」
8:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 20:25:42 ID:BOVqpC62
ベルトルト「ごめん…気持ち悪いよね、こんなの」
ミカサ「別に。ただ、純粋に疑問なだけ。…自分で自分を切っても、痛いだけで得るものはないから。」
ベルトルト「うん、痛いよ」
ミカサ「うん、痛そう」
ベルトルト「分かっているんだ。切っても、痛いだけだって。でもこうすると、少しだけ楽なんだ。…許されるような気がして」
ミカサ「何が?」
ベルトルト「僕が存在することが、かな…」
ミカサ「あなたは罪人なの?」
ベルトルト「…」
ミカサ「…余計な詮索だった。もうしない」
ベルトルト「…ああ、助かるよ」
9:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 20:27:11 ID:BOVqpC62
ミカサ「それでも、手首を抉ってしまったら訓練に支障がでる。ので、次にやるときは、もう少し切る場所を選ぶといい」
ベルトルト「…」
ミカサ「…何?」
ベルトルト「あ、いや…ごめん、意外だなと思っちゃって…」
ミカサ「意外?」
ベルトルト「君はエレンのことにしか興味がないのかと思っていたから、その、少し驚いた」
ミカサ「それは心外」
ベルトルト「そうだよね。ごめん」
ミカサ「アルミンにもある。アルミンは私の大切な親友」
ベルトルト「その他は?」
ミカサ「…」
ベルトルト「…はは」
10:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 20:28:59 ID:BOVqpC62
ミカサ「…あなたの言うとおり、2人以外にはあまり関心が持てないのは事実。」
ミカサ「エレンは家族、アルミンは親友。そしてその他は」
ベルトルト「家族?」
ミカサ「何か?」
ベルトルト「君とエレンって、恋人同士なんじゃないのか?」
ミカサ「は?」
ベルトルト「そ、そんな怖い顔しないでくれ。いつも一緒にいるから、その、勘違いしてたみたいだ。ごめん…」
ミカサ「…」
ベルトルト「…」
11:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 20:29:57 ID:BOVqpC62
ミカサ「…エレンには、昔、命を救われたことがある。」
ベルトルト「…そうなの?」
ミカサ「ええ、このマフラーはその時もらった」
ベルトルト「それでいつもしてるんだね、それ」
ミカサ「うん」
ベルトルト「大切なものなんだ」
ミカサ「…うん」
14:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 20:32:40 ID:BOVqpC62
ミカサ「…私はここにいる人達を、大切な仲間だと思っている。それでも1番優先すべきはエレン。その次にアルミン。」
ベルトルト「順番があるんだね」
ミカサ「ええ。」
ミカサ「優先すべき命を自分の中で発揮りさせて置かないと、窮地の時に迷いがでる。…一瞬でも迷っては駄目。人は、簡単に死んでしまう」
ベルトルト「…」
ミカサ「…私の目に映る範囲と、この両手で守れるものには限界があるから」
ベルトルト「………そう、か」
ーああ、そうか。
15:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 20:35:10 ID:BOVqpC62
コニー『おい、ベルトルト。1人で本読んでねぇでお前も混ざれよ。』
ベルトルト「そう、だよね」
ミカサ「…ベルトルト?」
ベルトルト「両手に溢れるくらい、たくさん抱えたらさ、抱えきれなくて、零れちゃうのに、ね」
ジャン『俺が勝ったらお前ら、明日朝食のパン俺に献上だからな!』
ベルトルト「そんなの、自分が辛いだけ、なのに。苦しいだけ、なのに…」
ライナー『ポーカーに1番向かなそうな奴が何言ってやがる。ははは…』
ベルトルト「どうして、そんな、簡単なことも、分からない、かなぁ」
16:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 20:36:21 ID:BOVqpC62
ミカサ「…何の話をしているのか分からない」
ベルトルト「…ご、めん」
ミカサ「分からないから、私には何もできない。ので、泣かないで欲しい」
ベルトルト「ごめん、…」
ミカサ「…もう行く。あなたも、落ち着いたら戻るといい」
ベルトルト「…ああ…」
18:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 20:37:27 ID:BOVqpC62
ベルトルト「あ、ハンカチ!…その、洗って返すよ」
ミカサ「いい。その様では多分洗っても落ちない。そのまま捨ててくれて構わない。特に思入れのある品でもないから。」
ベルトルト「……そう」
ミカサ「では、お大事に。」
ベルトルト「ミカサ」
ミカサ「?」
ベルトルト「ありがとう」
ミカサ「…どういたしまして」
19:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 20:39:00 ID:BOVqpC62
ーーーーーー
ーーーー
ーー
ミカサ「おはよう、エレン」
エレン「おう」
アルミン「おはよう、ミカサ」
ベルトルト「…あ、ミカサ!」
ミカサ「?」
ベルトルト「おはよう、少しいいかな?」
アルミン「おはよう、ベルトルト」
ベルトルト「おはよう、アルミン。エレンも」
エレン「よう。珍しいな、ミカサに用事か?」
ベルトルト「うん…あの、よかったら2人にしてくれないか。少しだけ」
アルミン「いいよ。行こうか、エレン」
エレン「おう」
20:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 20:40:59 ID:BOVqpC62
ミカサ「何?」
ベルトルト「あの、これ」
ミカサ「ハンカチ?」
ベルトルト「新しいのを買ったんだ」
ミカサ「気にしなくていいと言ったのに」
ベルトルト「うん、でも流石にね」
ミカサ「…綺麗な色」
ベルトルト「その…赤色、好きなのかと思って…赤にしようと思ったんだけど」
ミカサ「濃紺」
ベルトルト「ああ」
21:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 20:42:27 ID:BOVqpC62
ベルトルト「汚れて、ボロボロになったら…躊躇なく捨てて欲しいと、思ったから」
ミカサ「…」
ベルトルト「…その」
ミカサ「…ありがとう。使わせてもらう」
ベルトルト「うん。それじゃあね」
ジャン「おい!おいおいおいベルトルト!」
22:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 20:45:14 ID:BOVqpC62
ベルトルト「ジャン、おはよう」
ジャン「おはようじゃねぇよ!どういうこった!?お前もミカサ狙いなのか!?」
ベルトルト「そんなんじゃないよ」
ジャン「本当だな!?嘘ついてないだろうな!?」
コニー「ベルトルトが相手じゃ勝ち目ねぇもんなぁ、お前」
ジャン「んだとぉ!?」
ライナー「ジャンよりいい奴なのは確かだな」
ジャン「てっめぇ!」
ベルトルト「あはは…」
大丈夫。
大丈夫。
僕は
捨てられる。
終
24:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 20:46:43 ID:dQJX9NTs
乙
面白かった こんな切り口は初めてだな
25:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 20:48:22 ID:BOVqpC62
短くてサーセン。
11巻読んで、躊躇して一発で首を落としきれなかったミカサを見て、やっぱり訓練兵時代に何かしら絡みはあったんだろうなと妄想して書いた。
ミカサかわいいよミカサ。
27:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 20:57:45 ID:MsvoLdMQ
シンプルだがとてもいい
乙!
29:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 21:18:23 ID:vqNG9YrY
乙でした!ミカサは誰のどんな話も淡々と聞いてくれそうな気がする。この2人が仲良しだと癒されるわ。原作がアレなだけにw
ズグン、と腹の奥から何かが生まれた。
自分の鼓動がやけにはっきりと聴こえる。
くるしい。
いたい。
いきが、
そのよく分からない感情に押し上げられ、じわじわと目に涙が溜まる。今にも零れ落ちてしまいそうだ。
見られないように顔を伏せながらそっと部屋を出た。
ライナーに声をかけられたが、震える声を抑えながら、トイレ、とだけ答えた。
ベルトルト「…うう、うわぁ、あ」
外へ出て、誰もいない宿舎裏で泣いた。涎と、涙と鼻水が混じったものが次から次へと顔を伝い、暗闇に落ちては消えていった。呼吸が浅く、切れ切れになる。
徐に、ポケットに忍ばせた折りたたみナイフを取り出す。
3:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 20:18:45 ID:BOVqpC62
震える手でナイフを広げ、その先端を手首の皮膚に押し当てる。
徐々に力を込めると、ブツ、と音を立てて冷たい金属が肉に食い込んだ。
そのままナイフを下に滑らせる。
張っていた皮膚の表面が決壊して、そこから溢れる、
血が、血が、血が。
手首に激痛が走り、思わずナイフを落としてしまった。
ベルトルト「いたい、はぁ…いたいよぉ…」
こんなことをしても、自分からは逃げられないことはわかっている。
それでも、感情の逃げ場所を無くした僕は、凝り固まった膿を出すかのように時々こうして手首を切った。
痛みに耐えかねて、どうせすぐに治してしまうのだけれど。
ベルトルト「情けない、な…」
「なにをしてるの?」
4:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 20:21:49 ID:BOVqpC62
ベルトルト「!?」
見られた。こんなところを。
ー誰に?
恐る恐る振り返ると、そこには、夜目にも美しい黒髪をたたえた、1人の少女が立っていた。
ベルトルト「ミ、カサ…?」
ミカサ「…」
ベルトルト「あ、待ってくれ!行かないで」
ミカサ「!」
ベルトルト「…ごめん、その、変なところ見せて…」
ベルトルト「あの…このことは誰にも言わないでくれ。頼む」
ミカサ「…」
ベルトルト「…ミカサ?」
5:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 20:23:04 ID:BOVqpC62
ミカサ「元より、言い触らす気はない。ただ、出血が多いので、誰かを呼ぼうと思っただけ。」
ミカサ「でも、他人に見られたくないと言うのなら、呼ばない…」
ベルトルト「そうしてくれると助かるよ」
ミカサ「…」
彼女は何か思いつたように、自分のスカートのポケットに手を入れ、刺繍の施されている白い布ーハンカチを取り出した。
そして僕の前に膝をつき、そのハンカチをそっと手首に巻いてくれた。
その全ての動作が細工物のように洗練されている、そう思った。
ベルトルト「汚れちゃうよ」
ミカサ「構わない。」
ベルトルト「ごめん…ありがとう」
鮮血は染み渡り、あっという間に白いハンカチを紅に染めた。
沈黙が怖い。何か言わなければと目を泳がせていると、ふと彼女の首元に目がいった。
6:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 20:24:27 ID:BOVqpC62
ベルトルト「は、はは、マフラーとお揃いになったね」
ミカサ「は?」
ベルトルト「…その、えっと…これ、色が」
ミカサ「笑えない」
ベルトルト「ごめん」
ミカサ「早く医務室に行くといい」
ベルトルト「大丈夫だよ。見た目より傷口は浅いから、多分」
ミカサ「…」
ミカサ「なぜ自分で切ったの?」
ベルトルト「…」
8:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 20:25:42 ID:BOVqpC62
ベルトルト「ごめん…気持ち悪いよね、こんなの」
ミカサ「別に。ただ、純粋に疑問なだけ。…自分で自分を切っても、痛いだけで得るものはないから。」
ベルトルト「うん、痛いよ」
ミカサ「うん、痛そう」
ベルトルト「分かっているんだ。切っても、痛いだけだって。でもこうすると、少しだけ楽なんだ。…許されるような気がして」
ミカサ「何が?」
ベルトルト「僕が存在することが、かな…」
ミカサ「あなたは罪人なの?」
ベルトルト「…」
ミカサ「…余計な詮索だった。もうしない」
ベルトルト「…ああ、助かるよ」
9:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 20:27:11 ID:BOVqpC62
ミカサ「それでも、手首を抉ってしまったら訓練に支障がでる。ので、次にやるときは、もう少し切る場所を選ぶといい」
ベルトルト「…」
ミカサ「…何?」
ベルトルト「あ、いや…ごめん、意外だなと思っちゃって…」
ミカサ「意外?」
ベルトルト「君はエレンのことにしか興味がないのかと思っていたから、その、少し驚いた」
ミカサ「それは心外」
ベルトルト「そうだよね。ごめん」
ミカサ「アルミンにもある。アルミンは私の大切な親友」
ベルトルト「その他は?」
ミカサ「…」
ベルトルト「…はは」
10:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 20:28:59 ID:BOVqpC62
ミカサ「…あなたの言うとおり、2人以外にはあまり関心が持てないのは事実。」
ミカサ「エレンは家族、アルミンは親友。そしてその他は」
ベルトルト「家族?」
ミカサ「何か?」
ベルトルト「君とエレンって、恋人同士なんじゃないのか?」
ミカサ「は?」
ベルトルト「そ、そんな怖い顔しないでくれ。いつも一緒にいるから、その、勘違いしてたみたいだ。ごめん…」
ミカサ「…」
ベルトルト「…」
11:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 20:29:57 ID:BOVqpC62
ミカサ「…エレンには、昔、命を救われたことがある。」
ベルトルト「…そうなの?」
ミカサ「ええ、このマフラーはその時もらった」
ベルトルト「それでいつもしてるんだね、それ」
ミカサ「うん」
ベルトルト「大切なものなんだ」
ミカサ「…うん」
14:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 20:32:40 ID:BOVqpC62
ミカサ「…私はここにいる人達を、大切な仲間だと思っている。それでも1番優先すべきはエレン。その次にアルミン。」
ベルトルト「順番があるんだね」
ミカサ「ええ。」
ミカサ「優先すべき命を自分の中で発揮りさせて置かないと、窮地の時に迷いがでる。…一瞬でも迷っては駄目。人は、簡単に死んでしまう」
ベルトルト「…」
ミカサ「…私の目に映る範囲と、この両手で守れるものには限界があるから」
ベルトルト「………そう、か」
ーああ、そうか。
15:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 20:35:10 ID:BOVqpC62
コニー『おい、ベルトルト。1人で本読んでねぇでお前も混ざれよ。』
ベルトルト「そう、だよね」
ミカサ「…ベルトルト?」
ベルトルト「両手に溢れるくらい、たくさん抱えたらさ、抱えきれなくて、零れちゃうのに、ね」
ジャン『俺が勝ったらお前ら、明日朝食のパン俺に献上だからな!』
ベルトルト「そんなの、自分が辛いだけ、なのに。苦しいだけ、なのに…」
ライナー『ポーカーに1番向かなそうな奴が何言ってやがる。ははは…』
ベルトルト「どうして、そんな、簡単なことも、分からない、かなぁ」
16:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 20:36:21 ID:BOVqpC62
ミカサ「…何の話をしているのか分からない」
ベルトルト「…ご、めん」
ミカサ「分からないから、私には何もできない。ので、泣かないで欲しい」
ベルトルト「ごめん、…」
ミカサ「…もう行く。あなたも、落ち着いたら戻るといい」
ベルトルト「…ああ…」
18:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 20:37:27 ID:BOVqpC62
ベルトルト「あ、ハンカチ!…その、洗って返すよ」
ミカサ「いい。その様では多分洗っても落ちない。そのまま捨ててくれて構わない。特に思入れのある品でもないから。」
ベルトルト「……そう」
ミカサ「では、お大事に。」
ベルトルト「ミカサ」
ミカサ「?」
ベルトルト「ありがとう」
ミカサ「…どういたしまして」
19:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 20:39:00 ID:BOVqpC62
ーーーーーー
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ーー
ミカサ「おはよう、エレン」
エレン「おう」
アルミン「おはよう、ミカサ」
ベルトルト「…あ、ミカサ!」
ミカサ「?」
ベルトルト「おはよう、少しいいかな?」
アルミン「おはよう、ベルトルト」
ベルトルト「おはよう、アルミン。エレンも」
エレン「よう。珍しいな、ミカサに用事か?」
ベルトルト「うん…あの、よかったら2人にしてくれないか。少しだけ」
アルミン「いいよ。行こうか、エレン」
エレン「おう」
20:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 20:40:59 ID:BOVqpC62
ミカサ「何?」
ベルトルト「あの、これ」
ミカサ「ハンカチ?」
ベルトルト「新しいのを買ったんだ」
ミカサ「気にしなくていいと言ったのに」
ベルトルト「うん、でも流石にね」
ミカサ「…綺麗な色」
ベルトルト「その…赤色、好きなのかと思って…赤にしようと思ったんだけど」
ミカサ「濃紺」
ベルトルト「ああ」
21:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 20:42:27 ID:BOVqpC62
ベルトルト「汚れて、ボロボロになったら…躊躇なく捨てて欲しいと、思ったから」
ミカサ「…」
ベルトルト「…その」
ミカサ「…ありがとう。使わせてもらう」
ベルトルト「うん。それじゃあね」
ジャン「おい!おいおいおいベルトルト!」
22:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 20:45:14 ID:BOVqpC62
ベルトルト「ジャン、おはよう」
ジャン「おはようじゃねぇよ!どういうこった!?お前もミカサ狙いなのか!?」
ベルトルト「そんなんじゃないよ」
ジャン「本当だな!?嘘ついてないだろうな!?」
コニー「ベルトルトが相手じゃ勝ち目ねぇもんなぁ、お前」
ジャン「んだとぉ!?」
ライナー「ジャンよりいい奴なのは確かだな」
ジャン「てっめぇ!」
ベルトルト「あはは…」
大丈夫。
大丈夫。
僕は
捨てられる。
終
24:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 20:46:43 ID:dQJX9NTs
乙
面白かった こんな切り口は初めてだな
25:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 20:48:22 ID:BOVqpC62
短くてサーセン。
11巻読んで、躊躇して一発で首を落としきれなかったミカサを見て、やっぱり訓練兵時代に何かしら絡みはあったんだろうなと妄想して書いた。
ミカサかわいいよミカサ。
27:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 20:57:45 ID:MsvoLdMQ
シンプルだがとてもいい
乙!
29:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 21:18:23 ID:vqNG9YrY
乙でした!ミカサは誰のどんな話も淡々と聞いてくれそうな気がする。この2人が仲良しだと癒されるわ。原作がアレなだけにw
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